阿賀に生きる
新潟県を流れる阿賀野川。58ヵ所もの発電所で埋め尽くされ、新潟水俣病の舞台ともなった川。しかし、川筋に住む人びとは愛情を込めて「阿賀」と呼ぶ。 監督を始めとする7人のスタッフがその川筋に住み込み、そこに住む人びとを3年間にわたって撮影した。 山間の田んぼを守り続ける老夫婦、二百隻以上の川舟を造ってきた舟大工、名人と呼ばれる餅つき職人。みんな囲炉裏を囲めば季節の川魚や山の幸を前に、唄を歌い川漁の自慢話に花が咲く。 しかし、その一方でこの川と暮らす人びとが、新潟水俣病の被害者家族でもあるという現実をつきつける。 新潟水俣病という社会的なテーマを根底に据えながらも、そこからはみ出す人間の命の賛歌をまるごとフィルムに感光したエンターテイメント・ドキュメンタリーの傑作。